水槽の掃除で移動させるとき、写真を撮りたいとき、あるいは朝起きたら床に落ちていたとき。
「ウパちゃんって、水から出しても大丈夫なんだろうか」と考える場面は、飼っていると意外と出てきます。
わたしも一度、水槽をリセットするときに「ちょっとの間だし」とプラケースに移そうとして、手のひらに乗せたまま数十秒もたついたことがあります。そのとき、ウパちゃんのエラがぺたんと頭に張りついて、房が一本ずつに見えなくなっていくのを見て、正直ぞっとしました。
先に答えを書きます。ウパちゃんは水から出すと、数分でも体に負担がかかります。 そして乾燥と酸欠が重なって、10〜20分程度で命に関わる状態になるといわれています。
ただ、この記事でいちばん伝えたいのは時間の数字ではありません。なぜ陸ではダメなのかが分かると、「じゃあどうすればいいか」が自然に見えてきます。そこを中心にお話しします。
結論|「何分まで」を目安にしないでください
最初にお伝えしておきたいことがあります。
「10〜20分で危険」という数字は、それまでなら平気という意味ではありません。 出した瞬間から負担は始まっていて、時間が経つほど回復に必要な時間が延びていく、と考えてください。
現実的な目安はこうです。
| 時間 | 状態 |
|---|---|
| 数秒〜30秒 | 移動などで避けられない範囲。ここに収める |
| 1〜3分 | 明確に負担。避けたい |
| 5分〜 | 皮膚の乾燥が進み、体力を消耗します |
| 10〜20分〜 | 命に関わる領域 |
わたしが「数十秒もたついた」と書いたのは、この表でいういちばん上の枠です。それでもエラの変化が目に見えました。ウパちゃんは、思っているよりずっと早く反応します。

なぜ陸ではダメなのか|3つの呼吸がすべて止まります
ウパちゃんには呼吸の手段が3つあります。エラ呼吸、肺呼吸、皮膚呼吸です。
問題は、空気中ではこの3つのうち2つが機能しなくなり、残る1つも力不足だという点です。順に見ていきます。
エラは空気中では働きません
頭の横のフサフサ。あれは水の中で房を広げて、水に溶けている酸素を取り込むための器官です。
空気中に出すとどうなるか。水の浮力がなくなるので、房がぺたんと頭に張りついてしまいます。 表面積が失われて、酸素を受け取る面がなくなるんです。
わたしが見たのは、まさにこの状態でした。エラそのものが傷んだわけではないのに、機能だけが一瞬で失われます。
肺だけでは足りません
ウパちゃんにも肺はあります。水面に上がって空気を吸うのは、この肺を使っているときです。水中の酸素が減れば肺呼吸の比重を上げることもできるので、飾りではありません。
ただしこの肺は、水中で足りない分を補うためのものです。 陸上生活を支えることを想定した作りにはなっていないので、エラが止まった分をまるごと肩代わりすることはできません。
念のため書いておくと、陸上で保たない主な理由は「肺が弱いから」ではありません。エラが潰れて機能しなくなることと、粘膜が乾いていくこと。 この2つが本体で、肺はそれを補いきれない、という関係です。
皮膚呼吸は乾いた時点で止まります
皮膚からも酸素を取り込んでいます。だからウパちゃんの体はいつもぬるっとした粘膜に覆われています。
この粘膜は、乾くと働きません。空気中では蒸発が始まるので、時間とともに皮膚呼吸も失われていきます。
しかも粘膜には、細菌や真菌から体を守るバリアの役目もあります。乾いて傷つくと、そこから感染症につながることがあります。ウパちゃんには鱗がないので、皮膚を守っているのはこの粘膜だけなんです。
つまり陸上では、呼吸が苦しいことと、皮膚を守れないことが同時に起きます。
ウパちゃんに体温はある?
ここで、意外と知られていないことに触れておきます。
ウパちゃんは変温動物です。自分で体温を作ることができないので、体温は水温とほぼ同じになります。 水が18℃ならウパちゃんも18℃です。
これが、素手で触ることが勧められない理由につながります。
人の手はだいたい36℃前後。ウパちゃんの適温は15〜20℃です。その差は15℃以上あります。 体温をその水温に合わせて生きている相手にとって、かなりの熱さだということです。
よく「ウーパールーパーを触ると火傷する」と言われますが、火傷するのは人間ではなくウパちゃんのほうです。厳密には熱による火傷というより、体温差と物理的な接触で粘膜が傷むということですが、避けたほうがいいという結論は同じです。

触り方の詳しい注意点は素手で触っていい?の記事にまとめています。
どうしても水から出すときの手順
とはいえ、水槽のリセットや通院で、まったく出さずに済ませるのは難しいこともあります。そのときのやり方です。
① そもそも「出さずに移す」のが基本です
いちばんいいのは、体を空気に触れさせないことです。プラケースやタッパーに飼育水ごとすくって移してください。 網ですくうと、そのあいだ必ず空気にさらされますし、網の目にエラや指が引っかかることがあります。
わたしは網をやめて、100円ショップの深めの保存容器(1.2Lのフタつきのもの)を水槽に沈めて、ウパちゃんが自分から入るのを待つようにしました。慣れると1〜2分で入ってくれます。時間はかかりますが、いちばん負担がありません。
② 素手で持つのは、最後の手段にしてください
ここははっきり書きます。①の容器移しで完結させるのがいちばん安全です。 素手は「他に方法がないとき」だけにしてください。
手を冷水で洗って冷やす方法がよく紹介されますが、わたしはあまり勧めません。理由が2つあります。
ひとつは、水道水で洗うと残留塩素が手に残ることです。塩素は粘膜にとって刺激になります。この記事で「石けんや消毒液がついた手は厳禁」と書いているのと、同じ理屈です。
もうひとつは、冷やしても数十秒で体温が戻ることです。手を冷やして、容器を探して、水槽のフタを開けて、と動いているうちに元の温度に近づきます。「冷やしたから大丈夫」がいちばん危ない思い込みです。
どうしても素手を使うなら、飼育水に手をひたして濡らしてから、数秒で終わらせてください。 水道水ではなく飼育水を使うのがポイントです。乾いた手は粘膜をこそげ取ってしまいます。
③ 時間は数秒。目標を決めてから動く
「移す先を用意してから持ち上げる」。これだけです。持ち上げてから容器を探すと、あっという間に1分が過ぎます。
④ 移動先の水温を合わせる
移す先の水は、必ずもとの飼育水を使ってください。バケツに汲み置きしていた水でも、置いてあった場所によって水温はずれています。
目安は差を1〜2℃以内に。 「5℃くらいなら平気だろう」と思われがちですが、体温がそのまま水温になる生き物なので、2℃違えば体温が2℃動くということです。人間で考えると相当な変化です。
水温計は水槽用と移動先用に2つあると確実です。片方を移し先の容器に浮かべておけば、合っているかがその場で分かります。
水槽から飛び出していた!見つけたときの対処
朝起きたら床に落ちていた、というケースです。焦ると思いますが、順番があります。
1. 体に付いたものを飼育水で流してから戻す
急いで戻したくなりますが、ひと呼吸だけ置いてください。床に落ちていた体には、ホコリ・髪の毛・カーペットの繊維・床用洗剤が付いています。
粘膜が傷んだ状態でそれらを水槽に持ち込むと、そこから感染につながります。飼育水を手ですくって、上からかけるようにやさしく流してください。 こすらないこと、水道水を使わないことの2つだけ守れば大丈夫です。
そのうえで、新しい水ではなく、もとの水槽の水に戻します。 弱っているところに水質の違う水を入れると、負担が重なります。
2. 部屋を暗くして静かにする
戻したら、しばらくそっとしておきます。ライトを消して、水槽の前で覗き込むのもやめてください。回復に必要なのは静かな環境です。
隠れ家を入れていない場合は、この機会に用意してあげてもいいと思います。落ち着ける場所があるかどうかで、そのあとの回復が変わります。
3. 数日は体表を観察する
乾燥したところは、あとから白っぽく変色したり、ただれてきたりすることがあります。当日は無事に見えても、2〜3日は毎日見てください。
チェックするのは、皮膚の白濁・ただれ・充血、エラの色と広がり、餌を食べるかどうかです。異常があれば皮膚トラブルの記事を確認してください。

4. 何時間も経っていた場合
夜のうちに落ちていて、朝まで気づかなかった。この場合は、動かなくても諦めないでください。
ウパちゃんは低水温だと仮死のような状態になることがあり、そこから戻ることがあります。エラの動き・触れたときの反応・エラの色を確認してください。手順は生死の確認とお別れの記事の前半にまとめています。
ただし、水槽の前で観察し続けないでください。 確認と並行して、両生類を診てくれる病院を調べて電話してしまうのがいいと思います。生きていれば受診すればいいですし、電話の時点で「その状態なら様子を見て大丈夫」と教えてもらえることもあります。判断を一人で抱え込む時間がいちばんもったいないです。
飛び出しを防ぐには|フタと、原因の両方
対処より大事なのは、そもそも起こさないことです。
フタは必須です。 ウパちゃんは普段のんびりしていますが、驚いたときや興奮したときに思いのほか跳ねます。
そのうえで、実際に飛び出す経路はフタの有無だけではありません。多いのはフィルターのコードを通す穴と、給餌口の隙間です。 フタをしていたのに落ちていた、というケースはたいていここです。
- 水面からフタまで5cm以上空ける(水位を上げすぎない)
- コード穴の余った隙間をウレタンやスポンジで塞ぐ
- 給餌口は使うときだけ開ける
- 外掛けフィルターの排水部分の隙間も確認する
ただ、フタをするだけでは足りません。飛び出すのには理由があります。
- 水質が悪い(居心地が悪くて逃げようとする)
- 水温が高い(夏に増えます)
- 水流が強すぎる(流されまいと動き回るうちに跳ねる)
- 同居個体に追われている
- 隠れ家がなく落ち着けない
飛び出しが起きたということは、水槽の中に居たくない理由があったのかもしれないということです。フタを付けて終わりにせず、水温と水質を一度測ってみてください。
うちで一度だけ跳ねたことがあるのですが、そのとき水温計は26℃でした。フタが甘かったのも事実ですが、原因はそちらではなかったと思っています。エアコンの設定を見直してからは、一度も起きていません。

よくある質問
- 水から出すと成体(陸生型)になるんですか?
-
なりません。ウーパールーパーが変態して陸に上がる姿になるのは、ホルモンや遺伝的な要因によるもので、水を減らせば起きるというものではありません。無理に水を浅くしても、変態は起こらず体を痛めるだけです。飼育下でこれを人為的に狙うことはおすすめしません。
- 写真を撮りたいのですが、少しだけ出すのもダメですか?
-
数秒であっても負担はかかります。どうしても撮りたい場合は、水から出すのではなく、水を張った浅めの容器に移してガラス越しや上から撮ってください。水中にいる状態のほうが、エラも広がっていて見た目もきれいに写ります。ウパちゃんのためにも、写真のためにも、水の中がおすすめです。
- 水から出したあと、しばらくじっとしています。大丈夫でしょうか?
-
所見で分けて考えてください。体表もエラも見た目に変化がなく、ただ動かないだけなら、驚いて固まっているケースが多いので、暗く静かにして数時間様子を見て構いません。
一方、エラが縮んでいる・体表が白く濁っている・口を大きく開けて呼吸しているのどれかが出ているなら、翌日を待たないでください。その日のうちに両生類を診てくれる病院を探して連絡します。この3つは自然には戻りにくい所見です。
まとめ
- 水から出すと数分でも負担。10〜20分で命に関わる領域に入ります
- 「何分までなら平気」ではなく、出した瞬間から負担が始まっていると考えてください
- 陸上ではエラが張りついて機能せず、皮膚も乾けば止まります。肺だけでは補いきれません
- ウパちゃんは変温動物で、体温は水温と同じ。人の手は15℃以上も熱い
- 移すときは網ではなく、飼育水ごと容器ですくうのが基本。水温差は1〜2℃以内に
- 飛び出していたら、もとの飼育水に戻して暗く静かに。数日は皮膚を観察する
- フタは必須。ただしコード穴と給餌口の隙間が実際の経路です。飛び出した理由も一緒に確認を
ウパちゃんは、陸に上がることを想定していない体で生きています。水の中にいてくれるのがいちばん自然な姿なので、なるべくそのままにしてあげてください。
あわせて読みたい


コメント