進学、就職、転勤。引っ越しが決まったとき、荷造りのリストにウパちゃんのことが抜けていませんか。
わたしも引っ越しのときは、正直なところ最後まで後回しにしていました。段ボールに詰められないものだから、どう考えても当日いちばん面倒な荷物になるんです。
しかも調べてみると、引っ越し業者はウパちゃんを運んでくれません。 これは知らずに当日を迎えると、かなり慌てます。
さらにもうひとつ。ネットで「水槽 引っ越し」と調べて出てくる記事は、そのほとんどが熱帯魚向けです。ウパちゃんの場合、そこに書いてある注意点の一部がそのまま当てはまりません。 とくに冬の扱いが逆になります。
この記事では、いつ何をすればいいのかを時系列で整理します。段取りさえ分かっていれば、そこまで難しい作業ではありません。
大前提|生体は自分で運びます
まずここを押さえてください。
引っ越し業者は、生き物の運送を断ることができます。 標準引越運送約款に、動植物は引き受けを拒絶できるという趣旨の定めがあるためです。水槽という「モノ」は運んでもらえますが、中にいるウパちゃんは対象外です。
つまり、ウパちゃんは自分の手で運ぶことになります。 自家用車がなければタクシーや電車を使うことになりますが、事業者によっては生き物の持ち込みを断られたり、手回り品の扱いになったりします。 使う予定の鉄道会社やタクシー会社に、事前に確認しておいてください。
アクアリウム専門の運送業者もあります。距離や水量によりますが、近距離・小型水槽で2万円台からが相場のようです。大型水槽や、どうしても自分で運べない事情がある場合は選択肢になります。
熱帯魚とここが違う|冬に温める必要はありません
熱帯魚の引っ越し記事には、たいてい「冬は使い捨てカイロを一緒に入れる」と書いてあります。
ウパちゃんには、これをそのままやらないでください。
ウパちゃんの適温は15〜20℃で、10℃を下回っても問題なく過ごせます。 冬の移動で多少冷えたところで、それ自体が命に関わることはほとんどありません。
むしろ危ないのは温めすぎるほうです。カイロを密閉した箱に入れると、思った以上に温度が上がります。25℃を超えると病気のリスクが上がり、28℃を超えると命に関わるのがウパちゃんです。
引っ越しで本当に気をつけるべきなのは、冬ではなく夏です。
- 夏の引っ越し … 車内は驚くほど暑くなります。最大の危険
- 春・秋 … いちばん楽な時期。3〜4月の引っ越しシーズンは条件が良いです
- 冬の引っ越し … 水温の面ではほぼ問題なし。極端に冷える地域で長時間かかる場合だけ、カイロを箱の外側に貼る程度で十分

1週間前までにやっておくこと
① 運搬用の容器を用意する
フタつきのプラケースやタッパー、バケツなど、飼育水ごと入れられるものを用意します。深さがあって、フタが完全密閉にならないものが理想です。
ウパちゃんは皮膚でも呼吸しているので、容器内の空気が入れ替わらないと弱ります。かといって、フタを軽く乗せるだけにしないでください。 急ブレーキや段差で水がこぼれますし、跳ねて飛び出すことがあります。
正解は、フタに穴を開けたうえで、しっかり固定することです。
熱帯魚の記事では二重のビニール袋がよく紹介されますが、短距離の車移動ならフタつき容器のほうが扱いやすいです。長距離や宿泊をはさむ場合は、酸素を封入できる袋のほうが向いています。
② 発泡スチロールの箱を確保する
容器ごと入れる箱です。外気温の影響をかなり抑えられます。通販の緩衝材やスーパーでもらえるもので十分です。
③ 飼育水を貯めるポリタンクを用意する
水槽の水の半分程度を運べるだけのポリタンクがあると安心です。
ただし、ここで優先順位を正しく持っておいてください。よく「飼育水にバクテリアがいるから捨てるな」と言われますが、これは半分だけ正しい話です。
水質を保っているバクテリアは、そのほとんどがろ材と砂利の表面に定着しています。 水中を漂っている量はごくわずかです。
つまり、引っ越しの成否を分けるのはポリタンクの水量ではなく、ろ材と砂利を乾かさないことです。 水を運ぶ目的は、バクテリアの持ち込みというより「水質を急に変えないこと」だと考えてください。
もちろん運べるに越したことはないので、半分を目標に。ただし水を必死で運んで砂利を洗ってしまうのがいちばんもったいない失敗です。
④ 3日前から餌を止める予定を立てる
カレンダーに書いておいてください。当日に思い出しても間に合いません。理由は次の章で説明します。
⑤ 新居の水道水を確認する
引っ越し先が遠い場合、水道水の性質が変わることがあります。地域によって硬度が違うためです。
神経質になる必要はありませんが、新居での最初の水換えは少なめにして、ウパちゃんの様子を見ながら進めてください。
3日前〜当日の朝
餌は2〜3日前から止めます
これは必ずやってください。移動中にフンをすると、狭い容器の中で水がすぐ汚れます。
ウパちゃんは数日食べなくても健康な成体なら平気です。到着して水槽が落ち着いてから再開すれば十分です。
当日の朝、水槽を軽く掃除しておく
底に溜まったフンや食べ残しを取り除いておきます。運ぶ飼育水がきれいなほど、新居での立ち上がりが楽になります。
水温計を移動用の容器に入れておく
移動中に何度になっているかが分かると、対処ができます。夏はとくに必須です。
「自分で持つ箱」を1つ作っておく
これは実際にやってみて痛感したことです。業者の荷物に紛れると、当日その場で詰みます。
次のものは段ボールに詰めず、自分の手荷物にまとめてください。
- カルキ抜き(これがないと水が作れません)
- バケツ(水を運ぶ・移す両方で使います)
- 水温計(水槽用と移動用の2つ)
- 電源タップ(フィルターの位置に届かないことがあります)
- キッチンペーパーとタオル(必ずこぼします)
わたしはカルキ抜きを段ボールに入れてしまい、新居のコンビニを探し回りました。夏の引っ越しなら、新居のエアコンが当日から使えるかも先に確認しておいてください。ここが間に合わないと、冷やす手段がありません。
運び方|3つに分けて考えます
引っ越しの荷物としては、生体・飼育水・ろ材の3つに分かれます。それぞれ扱いが違います。
① ウパちゃん(自分で運ぶ)
飼育水ごと容器にすくって入れます。網は使わないでください。 網の目にエラや指が引っかかることがありますし、そのあいだ空気にさらされます。容器を水槽に沈めて、飼育水ごとすくうのが安全です。
水は容器の半分程度で十分です。入れすぎると、揺れたときに体が壁にぶつかります。
容器を発泡スチロールの箱に入れて、車内でも直射日光の当たらない場所に置いてください。夏は保冷剤をタオルで包んで箱の中に。ただし水の中には入れないでください。
② 飼育水(ポリタンクで運ぶ)
半分程度を運べれば上出来です。全部は無理でも、あるだけ意味があります。
フタをしっかり閉めて、倒れないように固定してください。 車の中で倒れると悲惨です。
③ ろ材(乾かさないことがすべて)
ろ材を乾かすと、バクテリアが死にます。 ここが引っ越しでいちばん失敗しやすいところです。
やることはシンプルです。
- フィルターからろ材を取り出す
- 飼育水を入れた袋か容器に入れる(水道水は絶対に使わない)
- 水はろ材が浸る程度。空気の層を残して口を閉じる
3番が大事です。水をなみなみ入れて完全密閉しないでください。 バクテリアも呼吸をしているので、酸素のない状態が数時間続くと死んでしまいます。それでは乾かすのと変わりません。
半日を超える移動になるなら、途中で一度口を開けて空気を入れ替えてください。
洗う必要はありません。むしろ洗わないでください。汚れに見えるものの中にバクテリアがいます。
④ 砂利(ろ材と同じ扱いです)
底砂を敷いている方は、砂利もろ材と同じくらい大事だと思ってください。表面にバクテリアが定着しています。
- 飼育水で湿らせたまま、バケツやジッパー袋に入れて運ぶ
- 洗わない。乾かさない
- 水を切りすぎない(湿っている状態を保つ)
「引っ越しのついでにきれいにしよう」と洗ってしまうと、新居で水質が一気に不安定になります。掃除は落ち着いてからにしてください。
水槽本体
水と砂利を完全に抜いてから運びます。水を入れたまま動かすと、重さでガラスが歪んで割れることがあります。水槽そのものは業者に運んでもらって構いません。
新居に着いたら|立ち上げの順番
到着後は、ウパちゃんを最後に入れます。 順番を守ってください。
- 水槽を設置する(水平な場所に。ぐらつきがあれば調整)
- 砂利やレイアウトを戻す
- 運んできた飼育水を入れる
- 足りない分を、カルキを抜いた水道水で足す
- ろ材をフィルターに戻して、電源を入れる
- 水温が落ち着くまで待つ(移動用の容器との差が2℃以内になるまで)
- 水合わせをして、ウパちゃんを入れる

6番を飛ばさないでください。 冬に冷えた容器を、暖房の効いた部屋の水槽にいきなり入れる。これが実際にいちばん起こりやすい失敗です。
両方の水温を測って、差が2℃以内になってから次に進んでください。差が大きいときは、次の水合わせで時間をかけて縮めます。
なお、移動中に5℃を下回るような環境には置かないでください。 低温そのものには強い生き物ですが、そこまで下がると新居との差が開きすぎます。
水合わせのやり方
いきなり水槽に放さず、水温と水質を段階的に合わせます。やり方は難しくありません。
- ウパちゃんが入った容器を、そのまま水槽の水面に浮かべる(15〜30分ほど)
- 容器の水を1/3ほど捨てて、水槽の水を同じ量足す
- 10分ほど待つ
- 2〜3を、あと2〜3回くり返す
- 容器の水と水槽の水がほぼ同じになったら、ウパちゃんを移す

面倒に感じるかもしれませんが、ここを丁寧にやるかどうかで、そのあとの数日が変わります。 全部で1時間ほどです。
移すときは、容器の水ごと流し込まないでください。移動中の水には汚れが溜まっています。ウパちゃんだけを、飼育水ごとそっとすくって移してください。
長距離・宿泊をはさむ場合
半日を超えるような移動になる場合の注意点です。
酸素の確保が課題になります。容器のフタを時々開けて空気を入れ替えるか、酸素を封入できるパッキング袋を使ってください。乾電池式のエアポンプを持っているなら、それを使うのがいちばん確実です。
宿泊をはさむ場合は、ホテルの部屋で容器のフタを開け、水面を軽くかき混ぜて空気を入れてあげてください。餌は与えません。
夏の長距離は、可能なら時期をずらすことを検討してください。 どうしても動かせない場合は、車のエアコンを切らず、夜間に移動するほうが安全です。
到着後の数日|見ておくこと
環境が変わった直後は、ウパちゃんも落ち着きません。
- 数日食べないことがあります。焦って与えなくて大丈夫です
- 隠れて出てこないことがあります。そっとしておいてください
- 部屋の隅など、静かで直射日光の当たらない場所に水槽を置いてください
見るポイントは、エラの色と広がり、体表に白いものが出ていないか、姿勢が傾いていないかの3つです。

新居では水質が不安定になりがちです。運べた飼育水が少ないほど、立ち上げ直しに近い状態になります。最初の1ヶ月はこまめに(3〜4日に1度、1/3ずつ)水換えをして補ってください。
よくある質問
- 引っ越し業者に、水槽だけ運んでもらうことはできますか?
-
できます。断られるのは中の生き物で、水槽そのものは荷物として扱ってもらえます。ただし水と砂利は完全に抜いてください。ここで注意なのですが、乾かしていいのは水槽本体だけです。 抜いた砂利は飼育水で湿らせたまま、別の容器で自分で運びます。砂利を洗って乾かすとバクテリアが失われます。ガラス水槽は重さがかかると歪んで割れることがあるので、見積もりのときに「ガラス水槽がある」と伝えておくと、梱包や積み方を配慮してもらえます。
- 車がありません。電車で運んでも大丈夫でしょうか?
-
短距離であれば可能ですが、まず鉄道会社に持ち込みの可否を確認してください。 生き物は手回り品の規定があり、事業者によって扱いが違います。持ち込めるなら、フタつきの容器を発泡スチロールの箱に入れ、水がこぼれないようにして持ちます。ただし夏場の駅構内やホームはかなり暑いので、保冷剤を箱に入れて、乗り換えの少ないルートを選んでください。長距離や夏の移動になる場合は、専門の運送業者に相談したほうが安全です。
- 引っ越しの前に、水槽をきれいに掃除したほうがいいですか?
-
大掃除はしないでください。フィルターのろ材を洗ってしまうと、バクテリアが失われて新居での水質が不安定になります。やっていいのは、底に溜まったフンや食べ残しを取り除く程度です。「汚れている」ように見えるろ材が、実は引っ越し後のウパちゃんを守ってくれます。
まとめ
- 引っ越し業者は生き物を運べません。 ウパちゃんは自分で運びます
- 熱帯魚と違い、冬に温める必要はありません。 カイロは入れないでください
- 危ないのは冬より夏。車内の温度に注意してください
- 餌は2〜3日前から止める。 移動中に水を汚さないためです
- 生体は網ではなく容器で、飼育水ごと。水は容器の半分程度に
- ろ材と砂利を乾かさない・洗わない。 バクテリアの大半はここにいます
- ろ材の袋は完全密閉しない(空気の層を残す。酸欠で死にます)
- 飼育水は半分を目標に。ただし水量より、ろ材と砂利のほうが大事です
- カルキ抜き・バケツ・水温計・電源タップは自分の手荷物に
- 到着後はウパちゃんを最後に入れる。水温差2℃以内にしてから、水合わせは1時間かけて
最後に、冒頭で書いた「後回しにしていた」話の続きを書いておきます。
わたしが引っ越したのは11月で、車で40分ほどの距離でした。水温の面では条件が良かったのに、それでも2つ失敗しています。ひとつはさっき書いたカルキ抜きです。もうひとつは、砂利をバケツに入れたまま、うっかりベランダに半日置いてしまったことでした。表面が乾いてしまい、新居では2週間ほど水が白く濁りました。
準備そのものは1時間もかかりません。失敗するのはたいてい、知らなかったことではなく、順番を間違えたことのほうです。 前日までに段取りだけ決めておいてください。
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